みかづきブログ その3

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飛び込み営業を辞めてIAMASに入学したらフロントエンジニアになれました。

本エントリーは IAMAS Advent Calendar 2017 の20日目の記事です。

こんにちは。 @ki_230 です。
飛び込み営業を辞めてIAMASに入学したらフロントエンジニアになれたという話を書こうと思います。


IAMASとは

http://www.iamas.ac.jp/wordpress02/images/spj_photo.jpg
http://www.iamas.ac.jp より引用

ざっくりいうと、岐阜にある独立大学院です。

公式サイトには、

情報科学芸術大学院大学(Institute of Advanced Media Arts and Sciences)は英語の略称をとってIAMAS(イアマス)と呼ばれ、親しまれています。
IAMASは先端的技術と芸術的創造との融合を理念に掲げ、新しい文化を発信する教育機関として、また情報社会の中での新しい表現者の養成拠点として開学しました。

と書いてあります。
正直、はたから見ると得体の知れない学校だと思います。


自己紹介

現在は、制作会社でフロントエンジニアとして働いています。
IAMASにはいる前は、人材会社で飛び込み営業をしていました。

さっくりいうと、

人材会社(営業) ⇒ IAMAS(メディア表現専攻) ⇒ 制作会社(フロントエンドエンジニア)

こんな感じの経歴で、
IAMASのお陰でジョブチェンジできたといっても過言ではありません。


なんでIAMASを受験したか

ものすごく端折って書きます。

一言で言えば高専時代の研究の続きをやってみようと思ったからです。

その研究とは「骨伝導をつかって、耳の聞こえないひとに音楽を伝える」ための研究です。

当時は、音声を正確に振動に変換すること、すなわち「正確な発信」が重要と考え、研究をすすめていました。
残念ながら大した成果も出せず、卒業することになり、紆余曲折あって大学に編入、
大学を卒業後、人材会社に就職、飛び込み営業をする毎日で、高専時代の研究のことなどすっかり忘れていました。

が。

営業として、渉外活動をしていると、
こちらがどんなに「正確な発信」をしても、受けての聞き取り方次第で「聞いていた話と違うぞ」みたいな事が、結構頻繁に起こるわけです。

そこで高専時代の研究を思い出しました。

「あれ?正確に発信すれば良いと思っていたけど、実は注目すべきは受信側なんじゃなかろうか。」

そんなことを考え、2年間お世話になった会社を退職し、研究するべく、IAMASに入学しました。
高専の研究をそのまま続けるというわけではなく「受信者側に注目したコミュニケーション」を研究しようと思ったわけです。

IAMASで学んだこと

2年間で学んだもののすべてをここに書くことはできないですが、一部を紹介します。

【デザイン思考とラピッドプロトタイピング】

ひとことで言えば、高速でプロトタイピングして、仮説と検証を繰り返す。
いまの制作スタイルはIAMASで身につけたものといえます。
当然、仕事でも大いに役に立っています。

【Gainer / Arduino / Processing / Flash】

[asin:B0044X2E5S:detail]


プロトタイピングのツールとして簡単な使い方を学びました。
あとは学校に、レーザーカッター、3Dプリンタがあったので大いに活用させていただきました。

【アイデアスケッチ】

こちらもIAMASで身につけました。いまも描き続けています。

twitter.com

自分の考えをまとめるとき、他人と共有するときに便利です。

【構造主義】

本を何冊か読んだだけなので、深いところまで理解したわけではないですが、大きな影響を受けました。
あと、持論だとおもっていたことも、調べてみるとすでに先人が思いついていることが多々あることを学び、
そういうときは先人の言葉を引用したほうが説得力があるというテクニックも学びました。

【複製技術時代の芸術】

インターネット全盛の現代とコンテンツ制作の関係について学ぶきっかけになりました。
その後、いまの会社で薦められて「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」を読んだ時も、

「複製技術時代」ということを強く意識するようになりました。

【スケートボーダーは都市を二次創作しているということ】

日常に潜むおもしろさに注目きっかけになりました。
あと、これと併せて教授に、

  1. 論文の為(卒業のため)に研究しても面白いものにならないこと
  2. 既に無自覚に行っている行為は自分では当たり前だと思っているが、他人から見ると面白いものになっていること
  3. 正直、研究計画よりも無自覚に行っている行為の方が面白いから、それを論文にしたほうが良いこと
  4. 作業中に眠くなったら、それはつまらないってことだから、寝たほうが良いこと

などを教わりました。圧倒的感謝。

IAMASでつくったもの

【サプライズ・ウィンドウ】


サプライズ・ウィンドウ

移動空間内で鑑賞するためのコンテンツを制作しました。
子供の頃に頭のなかで思い描いていたイメージをヒントに制作しています。

キャラクターはボタンでのみ操作することができ、ゲームにはなっていません。
展示するたびに、

「風景に当たり判定を入れて、ゲームにしたらどうですか?」

という意見を度々頂いたのですが、

作者が考えたルールを発信することよりも、鑑賞者がルールを考えて遊んだ方が良いと思ってます。

と答えておりました。まさに受信者側に注目したコミュニケーション。

実のところ、プログラム初心者だったので、画像解析や当たり判定を実装することができなかった。
というのも大きな理由の1つですが、やはり、高専時代、営業時代に感じたことを活かしたいと思ったのも事実です。

卒業と同時に就職は決まらなかったのですが、
この作品でいくつかコンペの賞をいただき、いまの制作会社に就職できることになりました。


卒業後つくったもの

仕事ではなく、自主制作でつくったものをいくつか紹介します。
「24時間働き、24時間遊ぶ」をモットーにした会社なので、ありがたいことに比較的自主制作にも時間を取れたりする環境です。

【サプライズ・ウィンドウ(ノベルティ用)】


サプライズ・ウィンドウ

卒業後は8ヶ月ぐらい無職になり、なんとか仕事をつくらなければならないと思い、
ペットボトルのおまけバージョンをつくって、飲料メーカーに自主提案したりしてました。
プロダクトとしては、いまでもよくできていると思っています。
しかし、いま思い返すと提案力はぜんぜんでした。

【CHIBADGE(チバッジ) 千葉ロッテマリーンズのスコアがバッジで確認できるアプリ】

http://cdn-ak.f.st-hatena.com/images/fotolife/k/kimizuka/20140609/20140609033345.png

ここからは、いまの会社に入社して、3年ほどプログラムをみっちり勉強した後につくった作品です。

僕は、千葉ロッテマリーンズが好きなんですが、
なんとかアプリを開かずとも試合の結果がわからないものかと考えて、
アプリケーションバッジで試合の結果を伝えるアプリをつくりました。

chibadge.kimizuka.fm

サーバサイドは会社の同僚につくってもらいました。
アプリ制作もはじめてだったので、また別の同僚に教えてもらいながらつくりました。

会社の環境をフルにつかわせていただいた作品ですね。

kimizuka.hatenablog.com
kimizuka.hatenablog.com
kimizuka.hatenablog.com
kimizuka.hatenablog.com

いま振り返ると、チバッジに関するエントリー、めっちゃ書いてて、当時の興奮具合が伝わってきます。

iOS10以降で動かすためにはアプリのアップデートが必要だったのですが、
何度アップデートを申請してもリジェクトされつづけるため、
惜しまれながらクローズする運びとなりました。

いつか復活させたい。今度はサーバサイドも自分で実装したい。という思いはあります。はい。


【そうぞうの遊び】


そうぞうの遊び from そうぞうの遊び on Vimeo.

「こともの頃に勝手につくっていた遊びをデジタルリメイクする」をテーマに、
会社の同僚とつくって、会社の同僚のお父さんが持っているギャラリーで展示を行いました。

sozonoasobi.art

こちらも会社の環境をフルにつかわせていただいた作品群ですね。


【黄金チャーハン】


光り輝く黄金チャーハン

めっちゃ光るチャーハンをつくりました。
説明するまでもないですが、正確にはチャーハンではなくフタが光っています。
詳細は こちらのエントリー にまとまっています。

kimizuka.hatenablog.com


【マットマックス】

まずは、RPGのダメージ床っぽい体験できる「ドクヌマット」をつくり、


ドクヌマット

振動のバリエーションを増やしたり、


マットマックス4DX

Orpheと連携したりして、


マットマックス4DX with Orphe

最終的にその日の天気を伝えるIoT玄関マットになりました。


マットマックス4DX with YuMake

結果、 MashupAwards2017 にて YuMake賞を頂きました。

【光るまきびし】

世界一安全なまきびしをつくりました。
ときどき販売しています。用途は不明ですがときどき売れます。

www.youtube.com


【台無しプロダクト】

よかれと思って機能を足した結果、元の機能を台無しにしてしまうことを目指したプロダクトを考えました。
光るまきびし単体ではパンチが弱いなと思い、作品群をつくった結果です。いまも継続しています。

twitter.com


よくある質問

【IAMAS入学前に作品制作はしていたんですか?】

0です。
なので、制作に関してはほぼすべてIAMASで学んだと言えます。

入試の際に、「持ってくると良いよ」と言われた、「ポートフォリオ」の意味も知らず、
入試には「履歴書」「職務経歴書」「高専時代の卒業論文」を持っていきました。
いま考えると、よく受かったなと思います。

【IAMAS入学前はどれぐらいプログラムが書けたんですか?】

ほぼ0です。
高専の授業でVBを学んだので、教養としてif文、for文ぐらいは知っていました。
グローバル変数とローカル変数の違いも知らなかったし、switch文とかも知らなかったし、
クラスは設計図だと思ってました。

IAMASに入学してから「1週間でわかるFlash」みたいな本を買って、
周りの人に教えていただきながら、1週間でFlashを覚えました。

が。

1週間だったので、ActionScript3は理解できず、ActionScript2を使い、グローバル変数とif文で構成されたプログラムを書いてました。
サプライズ・ウィンドウに関してはガラケーで動かしているので、Flash liteで開発しています。

【なんでIAMASを選んだんですか?】

まずは「国公立」「独立大学院」で絞り、
一番、面白そうな研究している学校を選びました。インターフェイスの研究に特化したスタジオがあったことが決めてとなりました。

「国公立」にこだわった理由は学費が安いから。
「独立大学院」にこだわった理由は、既卒でも不利にならなそうだからです。

〇〇大学の大学院だと、学部生の頃から研究している学生に勝る成果を出すのは難しいのではないかと考えました。

【いまの仕事はどんなことをしてるんですか?】

主にJavaScriptをつかって、ウェブフロントやIoTデバイスのフロントを担当しています。
受託業務がメインの部署にいるのですが、エンジニアでもアイデア出しから関わることができるので、とても楽しく働いています。
わりとIAMASに近い環境だと思っています。


おわりに

以上、「飛び込み営業を辞めてIAMASに入学したらフロントエンジニアになれた話」でした。
と終わろうと思いましたが、単純につくったものを紹介しただけになってしまっていることに気づきました。

なので、ちょっと補足します。

IAMASは、学年の半分ぐらい既卒(僕が通っていた頃はそうでした)だし、会社を辞めて入学しやすい学校だと思っています。
また、本当にいろんな経験ができる環境であり、
入学するまで作品制作経験がゼロ、
というか、そもそもインターフェイスの学校だと勘違いしていて、
はじめの授業で「今日は都市の神話をつくろう」みたいなことを言われたときに、
「???」となっていた僕ですら、
教授や先輩、クラスメイトに頼まれる「展示の手伝い」とか「制作の手伝い」は基本断らない姿勢で2年間過ごしたことで、
それなりの制作力を身につけることができたと自負しております。

そんなIAMASは、いまの会社の入社のきっかけを与えてくれて、
ものすごく正確に書くと、その後フロントエンドエンジニアになれたのは、
いまの会社のみなさまにめちゃくちゃプログラムを教えてもらったからなんですが、
こちらも、3年ぐらい依頼された仕事は断らない姿勢で過ごしたことによって身についたといえるでしょう。

なので、基本的に「まずやってみる」ことが大切なのかもしれません。


はい。


明日は、 dropcontrolさん による、「IAMASでの修士作品の映像公開と過程について」です。
こちらからは以上です。